認知バイアスを深堀りする

認知バイアスは、人間の判断が理想的な統計、論理、期待効用などの規範から系統的にずれる現象として研究されてきた[1]。しかし、規範からの逸脱が確認されたことと、その判断機構があらゆる場面で欠陥であることは同じではない。人間 … 続きを読む

性感とクオリア

本稿は、最初から一貫して「性感」を主題として扱い、その主観的体験であるクオリアがどこから生まれ、なぜ強烈で、なぜ本物として感じられるのかを、生物学・神経科学・制御理論の枠組みで体系的に整理することを目的とする。性を文化的 … 続きを読む

クオリアとは何か

赤を見る感じ、痛みの痛さ、音の響き方のような主観的な質は、哲学ではクオリアと呼ばれる。ただし、クオリアは神経科学で一つの変数として定義された用語ではない。体験の内容、意識状態、報告可能性、自己帰属、感じそのものが、同じ言 … 続きを読む

なぜ世界は意味を持つのか

世界に規則性があることと、世界が意味を持つことは同じではない。物理法則は、ある状態から別の状態への変化を記述する。しかし、その変化が好ましいか、避けるべきか、何のために利用できるかまでは決めない。 本稿では、意味を「主体 … 続きを読む

時間はどこにあるのか

時間についての議論が混乱しやすいのは、一つの「時間」という語が、異なる説明対象を指しているためである。相対性理論が扱うのは、出来事の順序、時計の比較、観測者ごとの固有時である。量子重力で問題になるのは、時空そのものを量子 … 続きを読む

偉大なる衰退期は訪れるのか

産業革命以降、人類は人口、エネルギー利用、生産、輸送、通信、医療、教育、専門分業を同時に拡大してきた。本稿では、この複数の成長が相互に増幅した 19〜21 世紀を「偉大なる成長期( The Great Growth )」 … 続きを読む

自由意志とは何か

自由意志は、行為の直前に因果関係を断ち切り、何ものにも決められずに選択肢を一つ選ぶ力として語られやすい。この定義を採ると、行為に原因があれば自由ではなく、原因がなければ偶然になる。どちらの場合も、「自分が理由に基づいて決 … 続きを読む

機械に意識は宿るか

「機械に意識は宿るか」という問いは、SF の題材である以前に、意識・自己・生命をどう定義するかを問う。しかも、この問いは単一の意味を持たない。人間と同等の機能を実現できるか、主観的経験が生じうるか、そして「私」が移ると言 … 続きを読む

光の速度はなぜ有限なのか

本稿は前回の「時間はどこにあり、「いま」はどこで生まれるのか」に続き、有限な光速が時間と因果に何を意味するのかを扱う。 光に質量がないなら、無限の速さで進んでもよさそうに見える。しかし特殊相対論では、真空中の光速 \(c … 続きを読む

時間はどこにあり、「いま」はどこで生まれるのか

「なぜ現在の私は、過去や未来の私ではなく、現在の私なのか」という問いは、一見すると同語反復に見える。しかし、宇宙全体に一つの「今」があり、その一点に自分が置かれていると考えると、なぜこの時点だけを現在として経験するのかと … 続きを読む